男性ランナーのサブ3はフルマラソン完走者数の上位3%ですが、女性ランナーの上位3%はサブ3.5にあたります。女性にとって、サブ3.5で走る、あるいは目指す、ということは、そうとうな覚悟が必要なのです。
スピード練習をしていて、「うう、辛い」とへこたれそうになるとき、「男性だったら、こんなスピードを出すのは楽勝なんだろうな」と考える女性ランナーは少なくないのではないでしょうか。
筋肉量も酸素供給量も心臓の大きさも劣る女性は貧血や体調不良の日も多く、3時間半というタイムでゴールするために日々努力を重ねています。
この記事を書いている私は、初フルマラソンをサブ4でゴールし、その1年後のレースではサブ3.5を達成しました。
女性ランナーのサブ3.5は男性ランナーのサブ3!?
サブ3とサブ3.5は、それぞれ男女の上位3%
例年なら全日本マラソンランキングが発表される頃ですが、今年(2019年4月-2020年3月)は新型コロナウイルス感染症拡大の影響にともなう諸般の事情により発表が延期され、6月22日以降になるそうです。
前年度版(2018年4月-2019年3月)の全日本マラソンランキングのデータで2018年度完走者数の上位3%程度をチェックすると、男性ランナーはサブ3が上位3.1%、女性ランナーはサブ3.5が上位3.2%です。
男性のサブ3.5は上位12.2%となり、女性でいうならサブ4(12.3%)です。
マラソングランドスラムの難関はサブ3
ランニングを始めた頃、市民ランナーのマラソングランドスラムという言葉を知りました。
- フルマラソン・・・サブスリー(3時間切り)
- ウルトラ100km・・サブテン(10時間切り)
- 富士登山競走・・・山頂コース完走(4時間半以内)
この3条件をすべて達成すると、グランドスラムの称号が与えられます。
走り始めたばかりなので、ウルトラや富士登山競走などはまるでイメージがわきませんでしたが、フルのサブ3だけはその凄さがわかりました。
サブスリーは平均4分15秒/km以内で42.195kmを走り続けなければなりません。
実際、3つのなかで最も達成が困難なのはサブ3といわれています。
そのときすでに47歳の私には、とてもじゃないけれどサブ3は難易度が高すぎて絶対に無理。
初フルマラソン5時間の目標を途中で4時間に変更し、なんとかサブ4でゴール。その後はサブ3.5を目指し、フルデビュー後1年でなんとか達成しました。
次の目標として、大阪国際マラソンの出場資格を得るには当時、3時間15分を切らなくてはならず(いまは3時間10分)、チーム練習をさせてもらおうと参加してみたチームには、3時間15分を切っている女性ランナーが大勢いました。
一方、男性ランナーの目標は福岡国際マラソン選手権大会の参加資格タイムである2時間40分(いまは2時間35分)と聞いて過酷だなあと思った覚えがあります。
そんなエリート集団のなかにいると「周りはとにかく速い人」という括りになり、レースのときは男女ごっちゃにエントリータイム別に並ぶので、男女のタイム差について意識したことがありませんでした。
男女には違いがある
国際レースのエントリータイムに30分差
女性ランナーのサブ3.5って、実はけっこうすごくない? と真剣に思い始めたのは、昨年、国際レースを調べ始めてからです。
世界6大マラソンは、エリート枠でエントリーできるタイムに男女差があります。
東京マラソンのエリートの基準タイムは、男性2時間21分以内、女性2時間52分以内と31分、ロンドンマラソンは男性2時間45分以内、女性3時間15分以内と30分、ボストンマラソンはどの年代も30分、男性の方が速いタイムです。
他のメジャーは年代別でもタイムに違いがあります。
- ベルリンマラソン 18〜44歳 14分、45〜59歳 25分、60歳以上 45分
- シカゴマラソン 16〜49歳 30分、50〜59歳 45分、60〜69歳 60分、70〜79歳 85分、80歳以上 45分
- ニューヨークシティマラソン 18〜39歳 20分、40〜44歳 28分、45〜49歳 33分、50〜59歳 47分、60〜64歳 53分、65〜69歳 65分、70〜79歳 80分、75〜79歳 90分、80歳以上 100分
男女差は少ないもので14分から多いもので100分まで。
ちなみに、ニューヨークシティマラソンの80歳以上の基準タイムは男性4時間55分、女性6時間35分です。
世界(日本)記録の男女のタイム差は1.1倍
昨年の10月、峠走に出かける際に、通行止めになっている足柄峠に別のルートがないかと探していて、足柄峠走推奨者の岩本能史さんがご自身のサイトで別ルートを提案されているのを発見しました。
そのときに目についたのが下記のタイトルです。
女性ランナーが男性よりどれだけ頑張っているかを数字でお見せしましょう
2019.10.01 by 岩本能史
この記事によると、男性は女性より遺伝子の影響でランニングに向いているそうで、「部位的に50〜80%も筋肉量が多く(=女性の何倍もラクに前に進むコトができる)、酸素を運ぶ赤血球も15~20%多く(隣の女性は高地トレーニング並みの負荷がかかってる)、脂肪が少なく、骨格的に優位(ラクしてる)」とのことでした。
世界記録と日本記録の男女差のデータを見ると、100mの短距離からフルマラソンの長距離まで種目問わずすべて、女性の記録は男性の記録のほぼ1.1倍なのだそうです。
「平均的男性が89分で走るコースを平均的女性は11%遅い100分で走って対等ということ」です。「そっか〜、そうなのね〜」と、私は肩の力が抜けました。
でも、そうすると、男性ランナーのサブ3は、女性ランナーのサブ3.5ではなく、3時間18分ですね。
グランドスラムを女性換算すると、「フルマラソン:3時間18分以内、ウルトラ100km:11時間以内、富士登山競走:4時間57分以内」になります。
つまり、
MY★STAR 2019.10.01 Tuesday – 14:38 by 岩本能史
いいですか!世の男性ランナーの皆さん!
だから女性ランナーを風除けに使うとか、
皇居でストーカーみたいにぴったり張り付いて走ったりとか、
ラスト30メートルで先行して勝ち誇ったりとか、
男子に抜かれてもなすがままなのに女性に抜かれたら意地で抜き返すとか、
そもそもライバル視したり目標にするなんてアウトな行為なんだぞ!
むしろ逆に引っ張って差し上げるとか、
走りやすいコースを開けて差し上げるとか、
ラスト勝負で順位ひとつ譲って差し上げるとかするのがオトコってもんじゃね!?
ってコトを言いたいのですよ俺。
(はい頑張ります俺も)
私はこのコメントに、けっこう励まされています。
サブ3.5ランナーの走力の目安
当然のことですが、ハーフの記録を単純に2倍にすればフルのタイムになるわけではありません。
走力の目安とされている指標は下記の通りだそうです。
- 1500m:5分56秒
- 3000m:12分40秒
- 5000m:21分50秒
- 10km:45分16秒
- ハーフマラソン:1時間40分20秒
私はスピードを出すことが苦手なので、どれも達成できていません。スピード型かスタミナ型かと問われれば圧倒的に後者だという自覚はありましたが、そうとう無理して負荷をかけて、サブ3.5を達成したんだなあとしみじみします。
そんな私にとって、走歴1年半でサブスリーを達成し、さらに2時間42分台まで記録を伸ばした鈴木莉紗さんの努力と覚悟ははかりしれません。
まとめ
当たり前のことなのに、日々のトレーニングのなかでは男女の走力の差を忘れがち。
設定メニューをこなせないと「無理〜〜〜」と自分のふがいなさを感じてしまいますが、筋肉量も酸素供給量も心臓の大きさも秀でている男性と同じトレーニングメニューをこなしているなんて、と、十分がんばっていることをたまには褒めてあげましょう。