クロストレーニング、ご存じでしょうか。
専門の競技以外の多種目のスポーツをとり入れていくトレーニングのことです。メインのランニングの他に、自転車、水泳、筋トレなど。いま始めやすいのはサイクリングでしょうか。
ランニングに効果的にとり入れていけば、故障のリスクを抑えて、走力を伸ばすことが期待できそうです。
どんなふうに何をすればいいのか、実践的なトレーニング方法をご紹介します。
この記事を書いている私は、フルマラソンデビュー後9年間、サブ4を継続しています。
いまは、9月のバーチャルボストンマラソンに向けてトレーニング中です。
クロストレーニングとは?
クロストレーニング(cross training)とは、筋力、心肺機能、あるいは持久力、瞬発力などの能力が片寄らないように、専門以外の複数のスポーツを組み合わせて行うトレーニング方法をいいます。
ボストンマラソントレーニングプランに登場
初挑戦のボストンマラソンが4月から9月に延期になりました。さらに5月28日には実地開催の中止が決まり、バーチャルレースが9月に開催されることになりました。
バーチャルでの開催を受けて、20週間のボストンマラソントレーニングプランの目標タイムを3時間45分から4時間に、レベル3から2に6週目から変更することに。
レベル2のトレーニングプランをチェックしたところ、「クロストレーニングあるいは筋力トレーニング」という見慣れぬメニューが登場しました。
【4:00目標の20週間練習メニュー(6週目) :レベル2】
- 6月1日(月)オフ
- 6月2日(火)3.3kmウォームアップ + 5x(5’10″で1km)※セット間の休み2分 + 3.3kmウォームダウン
- 6月3日(水)6.5〜8.1kmのイージーラン(6’31”)
- 6月4日(木)クロストレーニングor筋力トレーニング
- 6月5日(金)3.3kmウォームアップ + 2 x(5’27”で3.3km)※セット間3分ジョグ + 3.3kmウォームダウン
- 6月6日(土)4.9〜6.5kmのイージーラン(6’31”)
- 6月7日(日)マラソンシミュレーション(ローリングヒルコース):8.1〜9.7kmのイージーラン(6’31”) + 9.7〜11.3kmのマラソンペースラン(5’43”) + 3.3kmのイージーラン(6’31”)
クロストレーニングのメリットは?
技術を上達させるには反復練習が必須ですが、同じ動作を毎日のように繰り返すと特定の筋肉や関節が疲弊し、ケガのリスクを増やしてしまいます。ひとつのスポーツに特化したアスリートは、複数のスポーツに取り組むアスリートに比べて、ケガをする確率が85%も高いそうです(米ウィスコンシン大学が2017年に行った調査)。
専門外のスポーツを積極的に取り入れることで、普段のトレーニングで欠けている部分を補い、身体能力やパフォーマンスを向上させられます。身体の他の筋肉を鍛えることで、ケガを予防し、リスクを軽減できます。
また、同じことばかり長期間繰り返すと飽きてしまって、停滞期に陥ることもあります。クロストレーニングは、筋力、体力、スピード、持久力など、全体的な身体能力の向上に役立ちます。
クロストレーニングの頻度は?
サイクリング、水泳、ヨガ、筋トレなど、毎日のように別のメニューをこなすのではなく、メインとなるワークアウトの他に、補完的なワークアウトを週に1~2日行うと、疲れた筋肉の休息や修復に役立つだけでなく、健康状態の改善が期待できます。
ランナーにベストなクロストレーニングとは?
自転車、水泳、ウォーキング、ハイキング、登山、縄跳び、筋トレ、ヨガなど、なんでもありですが、ランニングの場合は、水泳や自転車、ウォーキングを行う人が多いそうです。
ランナーが痛めやすい膝や足首に対する負担が少ない有酸素運動のため、走るだけでは強化できない部位を鍛えられます。故障時には心肺機能や筋力を維持できます。
サイクリングで速くなる
真剣に国際資格を目指していた10年ほど前、吉岡利貢さんの著書『毎日長い距離を走らなくてもマラソンは速くなる! 月間たった80kmで2時間46分! 超効率的トレーニング法』(ソフトバンク新書)に出会い、自転車のクロストレーニング法を練習に取り入れようかと思いました。
走行距離が増えて故障に繋がることが心配だったし、雨で走りにくい季節に自宅のローラー台でトレーニングできたら効果的だと思ったのです。
市民ランナーレベルでは、週64km、月間走行距離が240〜250kmを超えると故障が増えるという報告があります。ベテラン市民ランナーの多くは、月間250km以上走っていますから、故障していない人を探す方が難しいくらいです。
『毎日長い距離を走らなくてもマラソンは速くなる!』吉岡利貢(ソフトバンク新書)
ところが自転車を使ったクロストレーニングを取り入れることによって、故障が減るばかりではなく、走行距離を減らして効率的にマラソンなど長距離走のタイムを縮めることが可能なのです。
ランで心肺機能(持久力)を引き上げようと走る距離を伸ばしたり、強度のインターバル走をしたりすると、故障のリスクが高まってしまいます。ケガのリスクを増やさずに持久力を強化できるのがサイクリングです。
一年中ランニングばかりだと、走るために使われている筋肉や関節に疲労が溜まりやすく、オーバートレーニングや故障の原因になります。また、カラダに同じ種類の刺激を継続的に与えていると、刺激に順応して、目に見えない壁にぶつかったように体力の発達が頭打ちになります。これを「プラトー状態」といいます。
『毎日長い距離を走らなくてもマラソンは速くなる!』吉岡利貢(ソフトバンク新書)
プラトーとは高原という意味で、変化が水平になり、止まる状態を表現しているそうです。
自転車をこぐと大腿四頭筋や内転筋群、ハムストリングが鍛えられます。回転数を高めることでランニングのピッチも速まり、ランニングエコノミーが改善する可能性もあるそうです。
必要なのはロードバイクかクロスバイク。軽快車(ママチャリ)でもサドルを高めにして常に前傾姿勢を取るようにし、足首を固定してペダリングすればいいそうです。
太もも後ろ側のハムストリングを使うことを意識し、最低でも毎分80回転、できれば90〜100回転でのペダリングを維持しましょう。
長距離走などのハードなトレーニングの調整のためには前日に、疲労回復のためには翌日に、クロストレーニングを行いましょう。脚への衝撃なく、心肺機能の強化がはかれます。普段と違うトレーニングを行うことで、モチベーションの維持にも役立ちます。
実践的なトレーニング方法
吉岡さんによると、サブ4を目指すケースを想定したサイクリングとランニングを組み合わせたトレーニング例は以下の通りです。
一般的準備期
自転車
- 10km:週2日→高い回転数で時速20km(30分)
- インターバル:週1、2日→全力90秒+休み90秒を5セット
- ロングライド:週末1日→時速15〜20kmペースで3〜4時間
ラン
- ジョギング:週2日→1km6分30秒ペースで8kmほど
一般的準備期の月間走行距離は64km。スクワットなどの筋トレも週に2〜3日、行うとよいそうです。
レースが近くなったら、フルを走りきれるだけの脚づくりをするために、20kmのペース走など、ランを中心に組み立てます。それでも、専門的準備期の月間走行距離は92〜112kmです。無理のない範囲で筋トレも継続します。
専門的準備期(レース2か月半前から)
自転車
- 10km:週2日→高い回転数で時速20km(30分)
- インターバル:週1日→全力90秒+休み90秒を5セット
- ロングライド:日曜→時速15〜20kmペースで2時間
ラン
- ジョギング:週1日→1km6分20秒ペースで8kmほど
- レースペース走orビルドアップ:土曜→1km5分40秒ペースを挟んで3〜5段階で15〜20km
自転車の負荷がどれほど高いのかわからないのですが、ランの月間走行距離は短い! しかも週2日です。
プログラム通りにトレーニングをこなせるほど、自転車にちゃんと乗れるようになったら一度、試してみたいものです。
水泳もランニングに効果的!
サイクリングの他におすすめなのが、水泳です。
水泳は全身の筋肉をくまなく鍛えられる全身運動で、筋肉量が増え、代謝がアップします。
筋肉のポンプ機能が高まることで血液循環能力が高まり、全身への酸素供給もスムーズになります。
水圧で呼吸筋が鍛えられ、心肺機能や持久力が向上します。着地衝撃による体への負担がなく、腰や膝、足にダメージを与えません。肩甲骨や股関節、足首の柔軟性アップにもオススメです。
夏の暑さや冬の寒さを気にせずに、快適に取り組めるのも魅力です。
まとめ
登山やスキー、サップ、水泳など、意識せずに楽しんでいるスポーツがクロストレーニングになるんだとわかりました。
普段はトレーニング、というレベルでやっているわけではありませんが、専門外のスポーツを楽しむ気持ちが大切ですね。
それが、ランニングにも結果として返ってきたら最高!
10年前は自転車で設定通りにロードを走る自信がなくて、ローラー台を購入しようとしたのですが、どれがよいか迷いに迷って、結局サイクリングをトレーニングに取り込めませんでした。
クロストレーニング、気軽にあれこれ試してみようと思います。